アーユルヴェーダの歴史:ヴェーダの時代から現代まで、3000年の歩み

アーユルヴェーダの歴史を伝える古代インドの写本とハーブ

アーユルヴェーダの歴史は、紀元前1500年ごろの古代インドにさかのぼります。アーユルヴェーダは、サンスクリット語の「アーユス(生命)」と「ヴェーダ(知識)」を組み合わせた言葉で、「生命の知識」を意味します。

「世界最古の医学」と紹介されることも多いアーユルヴェーダですが、実際にはいつ、どのように形づくられてきたのでしょうか。この記事では、古代インドの聖典から、古典医学書、そして現代までの流れを、年代とともにたどります。

起源はヴェーダの時代にさかのぼる

アーユルヴェーダの源流とされるのが、古代インドの聖典「ヴェーダ」です。ヴェーダには『リグ・ヴェーダ』『サーマ・ヴェーダ』『ヤジュル・ヴェーダ』『アタルヴァ・ヴェーダ』の4つがあります。

最も古い『リグ・ヴェーダ』は、紀元前1500年ごろ、現在のパンジャーブ地方で編まれたと考えられています。この中にも、植物や水、病を払う祈りについての讃歌が含まれています。

医学とのつながりが深い『アタルヴァ・ヴェーダ』

4つのヴェーダのうち、医学と特に関わりが深いのが『アタルヴァ・ヴェーダ』です。古い部分は紀元前1500年ごろにさかのぼるとされ、病気や薬草についての記述が数多く残されています。

ただし、この時代の医学は今とはかなり違います。病気は悪霊のしわざと考えられ、呪文や祈りと治療がはっきり分かれていませんでした。のちに、この中の医学的な部分が整理され、アーユルヴェーダへと発展していきます。アーユルヴェーダが『アタルヴァ・ヴェーダ』の「副ヴェーダ(ウパヴェーダ)」と呼ばれるのは、このためです。

知識は口伝えで受け継がれた

文字が広く使われる前、ヴェーダの知識は師から弟子へ、声で伝えられていました。古典の多くが韻文(詩の形)で書かれているのも、覚えやすく、正確に伝えるための工夫だったといわれています。

そのため、今残っている文献がいつ成立したかと、その中身がいつから語られていたかは、必ずしも一致しません。アーユルヴェーダの年代にさまざまな説があるのは、こうした事情によるものです。

古典医学書の誕生:チャラカとスシュルタ

アーユルヴェーダが体系的な医学としてまとまったのは、紀元前後の数世紀のあいだです。この時期に、今も基本書として読まれている2つの古典が形づくられました。

内科の古典『チャラカ・サンヒター』

『チャラカ・サンヒター』は、内科を中心とした医学書です。医師チャラカが、それ以前から伝わっていた教えを改編したもので、その作業は紀元1〜2世紀ごろに終わったと考えられています。その後も、6〜9世紀ごろにドリダバラという学者が補ったとされます。

体質の考え方、食事、日々の過ごし方、季節ごとの暮らし方など、今のアーユルヴェーダの土台となる内容の多くが、この書に記されています。

外科の古典『スシュルタ・サンヒター』

『スシュルタ・サンヒター』は、外科を中心とした医学書です。手術の方法や器具、解剖についての詳しい記述があり、スシュルタは「外科の父」と呼ばれることもあります。

とくに知られているのが、鼻を再建する手術の記述です。この方法は18世紀末にヨーロッパへ紹介され、のちの形成外科の歴史にも名前が挙がるようになりました。

2つの書はお互いに言及していないため、どちらが先に成立したのかは、はっきりしていません。

年代でたどるアーユルヴェーダ

時代できごと
紀元前1500年ごろ『リグ・ヴェーダ』成立。『アタルヴァ・ヴェーダ』の古い部分もこのころにさかのぼる
紀元前500年ごろ『アタルヴァ・ヴェーダ』が4つめのヴェーダとして認められていく
紀元前後の数世紀『スシュルタ・サンヒター』『チャラカ・サンヒター』が形づくられる
紀元1〜2世紀ごろチャラカによる改編が終わる
6〜9世紀ごろドリダバラが『チャラカ・サンヒター』を補う
現代インドでは今も公的な医療制度のひとつとして学ばれ、世界各地で関心を集めている

「5000年」「7000年」という数字について

アーユルヴェーダの紹介では、「5000年の歴史」「7000年以上」といった表現をよく見かけます。ただ、これらの数字には、文献で裏づけられる根拠がありません。

ブリタニカ百科事典は、アーユルヴェーダの起源を「およそ3000年前」としています。これは『リグ・ヴェーダ』や『アタルヴァ・ヴェーダ』の年代とも合っています。口伝えの時代を含めればさらに古い可能性はありますが、はっきりした年数を示すことはできません。

とはいえ、3000年という時間も十分に長いものです。数字の大きさよりも、それだけ長く人々の暮らしの中で受け継がれてきたこと自体に、アーユルヴェーダの面白さがあります。

アーユルヴェーダは宗教ではない

ヴェーダは宗教の聖典でもあるため、アーユルヴェーダを宗教と結びつけて考える方もいます。しかし、アーユルヴェーダそのものは、食事や睡眠、季節ごとの過ごし方など、日々の暮らし方を中心にした知識の体系です。信仰の有無にかかわらず、考え方に触れることができます。

現代のアーユルヴェーダ

インドでは現在も、アーユルヴェーダを学ぶ大学があり、国の医療制度の中に位置づけられています。日本でも、季節に合わせた過ごし方や、オイルを使ったセルフケアなど、暮らしに取り入れやすい部分から関心が広がっています。

アーユルヴェーダの考え方をもっと知りたい方は、アーユルヴェーダとはやドーシャ(体質)のタイプの記事もあわせてご覧ください。

体調に不安のある方、持病のある方、妊娠中・授乳中の方は、アーユルヴェーダの製品や方法を取り入れる前に、医師にご相談ください。

よくある質問

Q. アーユルヴェーダは何年前からあるのですか?

A. 起源は、ヴェーダが編まれた紀元前1500年ごろ、つまりおよそ3000年以上前にさかのぼると考えられています。体系的な医学書が形づくられたのは、紀元前後の数世紀のことです。

Q. アーユルヴェーダと関係の深いヴェーダはどれですか?

A. 『アタルヴァ・ヴェーダ』です。病気や薬草についての記述が多く、アーユルヴェーダはその「副ヴェーダ」と位置づけられています。

Q. アーユルヴェーダは宗教ですか?

A. いいえ。ヴェーダを源流としていますが、アーユルヴェーダそのものは、食事や生活習慣を中心にした知識の体系です。

まとめ

アーユルヴェーダは、紀元前1500年ごろのヴェーダの時代に源流をもち、紀元前後に『チャラカ・サンヒター』と『スシュルタ・サンヒター』という2つの古典としてまとまりました。口伝えから文字へ、そして現代へと、形を変えながら3000年以上受け継がれてきた知識です。

インドで長く親しまれてきたアーユルヴェーダの製品は、アーユルカイのショップでご覧いただけます。

参考文献

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